これだったら子どもも騙せないよ、おじさん

誰しもここでこうしなければ大変なことになる・・なんて思う記憶があることでしょう。
 
大したものではないのですが、私にもあのときこれほど本気で走ったことはないなあ・・

なんて思った全力疾走の記憶があるのです。

私の子どもの頃はさすがに紙芝居をやりにくるおじさんはいなかったのですが、

学校の帰りに何やら怪しい物を売りにくるおじさんがいたのです。

 

毎日そこにいるわけではなく、全国を行商しているような
おじさんで、毎年春先に見かけるおじさんでした。

春というとなんとなくウキウキしてしまう時期でもあって、

子供心に怖いもの知らずで、

なによりも好奇心の固まリだった時期です。


おじさんが売っていたのは不思議なカードと動くマッチ箱でした。


見るからにというか聞くからにインチキなにおいが漂うのですが、
 
カードが不思議なわけでもないし、

マッチ箱が勝手にうごくわけではありません。

しかし、おじさんの手にかかると、

カードは不思議な力が加わったかのように絵が変わり、

マッチ箱はひとりでに動き出すのです。
 

いんちきくさいおじさんは、

「こんな不思議なのがおこづかいで買えるんだよ。
みんなに自慢できるよー」なんて煽ってくるのです。

好奇心の塊だった私はその一言に突き動かされました。

「今お金無いんだけど・・」なんていうと、

そのおじさんが「家まで取りに帰っておいでよ。

ただし、1時間もここにいないよ」

家まで歩いて20分・・余裕だけど、まずはお金がない・・

当時も今もその日暮しなのは変わらない。

家に帰ってもこづかいを調達できる確証はなかったのです。

とりあえずその調達する時間を考えて走りました。

間に合わなければ、不思議なカードも動くマッチ箱も手に入りません。
 

その言葉で、お金を持っていない子どもは私の含めて

一目散に走り出したのです。

歩いて20分だから走ったら10分もかからずに家に着きます。

当時は家に母親がいた時代です。当然、お金はくれません。

「そんなのインチキに決まってるから」

それでも、こっちはあきらめきれないので、奥の手を出します。

「こづかいの前借りで、とりあえず100円ちょうだい」

前借り・・こういう言葉を知っていたのか定かではないのですが、

当分毎日の小遣いはいらないから・・といったはずなのです。

 

一度言い出したらきかない性分は母親譲りなのか、

一歩もひかない私の姿勢に根負けして、100円を渡してくれたのです。

それを鷲掴みにして、今度はおじさんの元へ一目散に走りました。

スムーズにお金をゲットできたように見えますが、

それでも20分くらいはかかってます。

家に走った子どもたちの中では私が一番遠かったのですから、

誰よりも急がなくてはいけなかったのです。

 

おじさんは待っていてくれました。というよりも

商売だから待っていて当然と思ったのはずいぶん後になってからです。

そして、不思議なカードの代金の100円を支払ったのです。

 

動くマッチ箱は250円・・これはさすがに手が届きませんでした。

 

おじさんは前払いで100円を回収したあと、

お金を支払った子どもたちを集めて不思議なカードの説明をします。

しかし、その不思議なカードは、絵が半分を境に変わっていたのです。

うまく見せれば絵が変わったように見える

という、子供だましのカードで・・

私は子供心に「これだったら子どもも騙せないだろ・・」なんて

子供時代の話をしてみました。

 

今となったらなんで小学生が前借りという言葉を知っていたのか、不思議ですよね。

子供って好奇心でなんでも気になったら、

行動に移しちゃうから困ったもんだ。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です